ゆせいび!

加速器つくります大学院生です

加速器専攻の1Sセメスタ

8月末になり、メモも兼ねて加速器専攻の講義で学習したことを記事にしていきます。

記事タイトルについて、大学院の制度としては”1年目前学期"だったかと思いますが、馴染みのある表記にしています。

講義の名称などは正確なものではないかもしれませんがご了承ください。 ひとまずすべての講義について書きますが、あとで補足をしていきます。

共通科目

高エネルギー加速器化学セミナー

形式:全てビデオ会議システムでのオンライン配信・Q&Aあり

受講者:十人強くらい?

ウェブページ:

http://kek.soken.ac.jp//sokendai/intro/kamoku/seminar2020/

週替わりに講演者が自身の研究テーマであったり関連する加速器科学技術などを講義していただきました。テーマとしては”陽電子源"など加速器に関連することから、LHC で行われている物理、中性子による物性探査、放射光イメージングなど多岐にわたりました。

高エネ物理(HEP)の講演では、現在までわかっていること、今後データを蓄積してわかると期待されていることなどが印象的でした。

加速器概論・概論演習

形式:前半)ビデオ会議システム、後半)教室で対面、どちらもスライド講義

受講者:5人くらい(技術職員の方も含む)

ウェブページ:

Core Curriculum -加速器概論I-

加速器科学にかかわる基本領域について、それぞれの分野を専門にされている方がスライドで講義していただきました。テーマはビーム物理、放射光、真空、RF(Radio Frequency)加速、ビームモニターなどで、基本毎週独立しています。午前・午後1に講義があり、午後2に施設見学ないし測定など演習といった形式でした。

個別に受講した科目

ビーム不安定性

形式:前半)動画撮影→コメント、後半)資料を読んで発表→指摘

人数:1対1

資料:A.W.Chao, "physics of Collective Beam Instabilities", OHOの過去の講演資料, Wiedemann "Particle Accelerator Physics", 日本加速器学会”加速器ハンドブック", USPAS の過去の講演資料など

ビームが加速器の中を走るときには、ビーム進行方向に垂直な平面での振動(ベータトロン振動)と、ビーム進行方向の振動(シンクロトロン振動)があり、どのような条件下で安定なビーム運転ができるかに始まるビームの不安定性について記述する方法を学びました。 担当される方がRFを専門にされていることもあり、空洞におけるビームの記述を中心に、詳細にテキストを追っていくことにしました。

はじめは A. Chao を読んでいたのですが、なかなかに難度が高く、OHOというKEKで毎年開かれているセミナーの過去の講演の資料(日本語)を基盤として読むことにしました。このように学生に合わせて教材を変えてもよいというのもここの教育システムの良いところだと思います。

最終回は "head-tail instability と 電子雲による不安定性について" をテーマとして示されて、その発表をするという形式で終了しました。ビームの運動を記述する物理学を体系的だてて学ぶことが出来ました。

真空科学基礎

形式:前半)ビデオ会議システム、後半)対面で、どちらもテキストを読んでスライド作成し発表→コメント

テキスト:H.G.Tompkins のテキストを中心に

人数:1対1

ビームが走るところの加速空洞は、ビームがまっすぐ進むように平均自由工程の長い高真空(=気圧が低い)環境を作る必要があります。運転に携わるにあたって、基本的なポンプの使用方法やゲージの原理について理解しておく必要があると思い、受講しました。

テキストは基本的なことを一通りカバーしたもので、真空の記述方法、複数あるポンプのそれぞれの原理と特性、同じく複数あるゲージのそれぞれの原理と特性、質量分析器の原理などを学びました。テキストにあることと、専門にされている教員の方によるコメントの相違点などはよい学びになりました。

ソフトウェア基礎

形式:ビデオ会議システムで講義を聞く、適宜Q&A

資料:PowerPoint スライド

人数:1対1

covid-19 の影響を受けて始まるのが遅く、後半に集中して行われることになりました。タイトルはソフトウェア科学についてですが、データベースに関連する事項を中心に学びました。 ファイルシステムとデータベースの相違点、relational algebra, データベースの正規化、SQLの文法, PHPと連携してWebインターフェースの作成などをしました。最後にソフトウェア工学の全般的な内容にも触れました。

加速器科学とは直接的な関連のある内容ではありませんが、装置の監視データをDBにいれてブラウザで確認するということはなされているので、その機構を学べたのは良い機会でした。SQL, PHP はほとんど初めて触る言語で苦労も多く、今もまさに学期末レポートを前に終わらんと思っているところです。


ひとまずこのような感じでした。また書き足すかもしれません。

願わくばほかの方(とくに素粒子原子核実験の方)のM1の講義の内容とその感想も聞きたいなぁなんて思ったりしています…。